「ウサギと行く東京ディズニーランド⑧~別れのドライブと攻める傾斜角度~」
ミッキー邸をあとにするとあたりはすっかり暗くなっていた。
トゥーンタウンの出口近くにあるアトラクション「グランドサーキット・レースウェイ」の明かりが目に入った。
このアトラクションはいわゆるゴーカートのようなものだが、歴史は古く1983年の開業当時からある古参のアトラクション、私個人としてもかつては恋人と二人きりでドライブしたこともあり、思い出深いものなのだ。
そして、このアトラクションは2017年にクローズしてしまうという、私はお別れの挨拶も兼ねて久しぶりに乗ってみることにした(スタンバイ15分)。色とりどりのレーシングカー、私たちが乗るのは「18」と刻印された白に青と赤のラインが入った機体だった。
ペダルはアクセルのみのシンプルな作り、キャストの方に見送られて私とウサギは夜のドライブに出発した。
助手席にウサギを乗せて、薄暗いコースをひたすら走る。「この道を今より少し幸福だった、過去の私も運転していたのか」などと考えながらアクセルを踏む。
背中に感じるエンジンの振動がこのアトラクションの鼓動のように感じる。たくさんの思い出を乗せて走ったレーシングカーたちは、アトラクションがクローズした後どうなるのだろうかと想像してしんみりとしてしまう。そんな湿っぽい雰囲気をぶち壊すようにウサギが前のカップルを抜かせと捲し立てた。どう抜かせというのか…。
「グランドサーキット・レースウェイ」との最後の別れを終えた我々は、お別れついでに同じく2017年でのクローズが予定されているアトラクション「スター・ジェット」に乗ることにした。
こちらもオープン当初からある古参のアトラクション、小型宇宙船に乗って上空をブンブン回転する。あまり話題に上らないが地味に最恐アトラクションの呼び声高い乗り物である。
どこか頼りないシートベルト、年期の入った上昇レバー、意外と攻める傾斜角度、高所恐怖症の私には結構ハードルの高い乗り物だった。
二人乗りのスタージェットは恋人同士、父と子が密着できるように小さく作られている、私はウサギを前にかかえる形で乗ったが、その時ウサギの頭らへんから日向の犬小屋の毛布みたいなフレグランスが漂った。「ああ、動物なんだ」と改めて思い知らされる一幕であった。
「永遠に完成しない夢と魔法の王国」という理念を標榜するのはいい事だし、新しいアトラクションやエリアが出来るのもいいけど、懐かしい思い出の詰まったアトラクションたちがなくなってしまうのはやっぱり悲しい。ビジョナリアム、キャプテンEO、ストームライダー…。
つづく