東池袋訪問記 ラーメン屋の猫と再会のオケシャワー~前半~
池袋。
私にはあまり縁のない土地、なんとなくサンシャインシティという大きな建物があることと、池袋演芸場があること、そして、昔見ていたドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の舞台であることなどの大雑把な情報しか持っていない街。
よく晴れた土曜日の午後、私は一人池袋を訪れた。目的は大勝軒本店の中華そばを食べることと、サンシャインシティの目の前にあるというスーパー銭湯「タイムズ スパ・レスタ」へ行くこと。
私は熱心なラーメン教徒ではないのだけど、今は亡き大勝軒の生みの親、山岸一雄のドキュメンタリー映画「ラーメンより大切なもの」(いつかちゃんと記事にします)を作業の合間に何度も何度も見ていたら、もう、大勝軒のラーメンが食べたくてたまらなくなってしまった。
しかし、都内に数え切れないほどのチェーン店を有する大勝軒、食べるなら本店でできるだけ山岸さんが作っていた頃の味に近いものを食べたい!という思いに駆られての来店である。
入店し、厨房を覗くと嬉しい発見があった。すで取り壊された旧・大勝軒本店に飾られていた子猫の額装写真が飾られていた、何十年も山岸一雄やラーメンを啜る客たちを見守ってきた猫たちの瞳に感慨深いものを感じて嬉しくなる。映画で登場したアイテムに出会うのってなんでこんなに嬉しいのか。
さて、10分ほど並んでカウンター席に通された、注文したのは中華そばと餃子。つけめん発祥の地として名高い大勝軒で普通のラーメンを注文してしまった。
私はつけめんよりノーマルラーメンが好きなのだ。「ああ、私は今ラーメンを食べている」という感慨がつけめんには無いように思うからだ。
先に餃子がやってきた、5個入り。
ここで私の誤算が発覚した、餃子が大きいのだ。朝食を摂っていないとはいえ、このボリューミーな餃子に普通でも量が多い中華そば、はたして完食できるのか心配になりつつとりあえず餃子を食す。
肉厚な皮にたっぷりの汁が詰まっていて美味しい。美味しいが、肝心のラーメンが来ない、餃子をおかずに麺をすするという行為ができなくなる危険性があったため恐る恐る餃子を食べ進めた。
そして、ようやく私の前に熱々の中華そばが届いた頃には餃子は二個を残すまでになっていた、スープをすすり、麺をたぐった。
美味しい。
美味しいがDVDで何度も何度も、神格化された大勝軒のドキュメンタリーを観ていた私のなかで大勝軒のラーメンのハードルはかなり高度なものとなっていたためか、「美味しいが、普通」という思いが去来する。
しかも、ボリューミーな餃子効果で空腹も薄れ、早くも満腹状態。
食べても食べても減らない麺、山岸さんがプリントされた花山椒のボトルに嘲笑われているようにさえ感じる。
長居をしては後ろに並んでいる人たちに申し訳ないと思い、半分も食べきれずにリタイアし、そそくさと店を出た。
ガード下、私は自分の胃袋を恥じ、己の陰を見つめながらスーパー銭湯へ向けて歩き出した。
亡き山岸一雄の作るラーメンは常連客曰く「他のラーメンとはまったく違う」ものだったらしい、それは今私が食べた中華そばのような味だったのだろうか…、それとももはや山岸さんの生み出した味はこの世に存在しえないのだろうか…。
つづく