「ロッキーホラーショー」
私の大好きな映画10本の指の一つに入る作品。カルト映画の頂点ともいわれるミュージカルコメディーホラー映画、それが「ロッキーホラーショー」。
ロンドンの小劇場で上演されていたミュージカルを1975年にジム・シャーマン監督があえて低予算で作り上げた怪作。
ブラッドとジャネットは婚約したてのラブラブカップル、しかし、ドライブ中に車がパンクしてしまい、助けを求めて近くの古城を訪ねるがそこでは奇妙なパーティーが開催されていた。
それは館の主にしてバイセクシャルのトランシルヴェニア星人のフランク・フルター博士の作った、マッチョな人造人間の完成披露パーティーだった…。
奇人フルター博士を演じるティム・カリーの熱演が素晴らしい、また、下着姿で歌いまくる若かりし日のスーザン・サランドンや、冷凍庫からバイクで飛び出る不良少年エディ役のロックスターのミートローフも格好良い。
思い出補正と言うのだろうか、私がこの映画にハマったのは高校時代、仲間と一緒にこの映画の話題で盛り上がったりしたし、サントラをMDに入れて何度も繰り返し聴いた。埼玉にある美大受験学校への長い道中も、木炭デッサン中も油絵を描いてる時も、この映画の歌に支えられたし、大人になった今もちょくちょく聴き返している。
ただ、好みが分かれる作品ではあるようで、これまで私の目の前を通り過ぎては消えていった恋人達はことごとくこの作品を気に入ってはくれなかった…。
今日はそんな「ロッキーホラーショー」を劇中曲ごと紹介していく。ネタバレになるのでそういうのが気になる人はこのページを閉じて、近所のTSUTAYAに行き、「すみません、バイセクシャルな変態博士が自分好みのマッチョな人造人間を作るミュージカルってありますか?」と店員に尋ねて欲しい。
1.サイエンス・フィクション/二本立て
映画の冒頭、暗闇に浮かぶ巨大な口が歌う曲。舞台では劇場でポップコーンを販売していた売り子が突然歌い出す。
「地球の静止する日」「透明人間」「禁断の惑星」、古き良きSF映画二本立て時代のモンスターや俳優、名シーンを振り返る歌、落ち着いたトーンの曲で何度聴いてもセンチメンタルな気分になる名曲。
2.ダメット・ジャネット
友人の結婚式に出席した勢いで、ブラッドがジャネットにプロポーズする歌。ブラッドのハイテンション芸が見どころ。結婚式出し物にもおすすめ。ちなみにこの教会のシーンの後ろの方をよく見ると牧師一家が◯◯◯なのでよく見ておいてほしい。
3.フランケンシュタインの屋敷に
ブラッドとジャネットが大雨の降るなか森をさまよい、古い屋敷を発見したときに歌う。当時29歳のスーザン・サランドンの甘い歌声と、屋敷の窓から二人を覗きながら歌うリチャード・オブライエンの妖しいサウンドがたまらない。
4.タイム・ワープ
屋敷に足を踏み入れた二人を出迎えるかたちで奇妙な人物達が奇妙なダンスを踊りながら歌うこの映画の代表曲とも言える楽曲。冷静に事件のあらましを解説していた犯罪学者がなぜかステップの説明を行い、挙げ句の果てに机の上で踊りまくるのが楽しい。
5.スイート・トランスヴェスタイト
そんな変なダンスにドン引きの二人の後ろからエレベーターに乗った、館の主にして我らが性倒錯者フランク・フルター博士が登場し、そのまま自分の人となりと地下で人造人間を作っている旨を歌う。リズムをとるヒールの寄り画すらカッコイイ。まさにスーパースター登場といった感じ、高校生の頃はこの曲ばっかりリピートしていた。
ここまで映画をみても「つまらない」と感じるなら今すぐ、ディスクを取り出して「メリーポピンズ」を見よう。
6.ダモクレスの剣
フルター博士謹製のマッチョなイケメン人造人間「ロッキー」が生まれおちるなり天井にぶらさがって歌うナンバー。「ぼくの頭上にダモクレスの剣がぶら下がってる」と歌い、女装した白塗りの男に命を握られている、わが身の不幸を嘆く。そんな哲学的な歌を歌う割にロッキーの知能は幼児並に低いのだが…。ちなみに散々歌い散らした後、親でもあるフルターから「生まれて早々お行儀が悪いんだから」と叱られます。
7.男にしてあげる
そんなお行儀の悪いロッキーにフルターから贈られる歌。歌と一緒にダンベルや鞍馬(?)もプレゼント、「七日で十分、あなたを男にしてあげる」と高らかに歌う。もうすでにかなりのマッチョなのだが博士的にはまだ足りなようで「高タンパクの食事をして、生卵も飲むのよ」と宣う。ライザップも真っ青である。
8.ホット・パトゥーティー
そんな仲睦まじい二人の間に、突然、冷蔵室をぶち破ってバイクにまたがった小太りなロックンローラーがエディが乱入。ヘルメットを投げ捨てるなるそのまま歌い出す。…ここまで文字に起こしてみたら本当にどうしようもない映画だと再確認してしまう…。エディの頭の傷に注目。人造人間のロッキーの脳みその半分は彼の脳を移植してあるのだ。
9.男にしてあげるリピート
「筋肉がない」という理由でエディをバールのようなもので滅多打ちにして殺害したフルター博士が、ロッキーの筋肉にうっとりして再び歌う。
そのまま結婚行進曲が流れて二人は寝室に消えていく。さっきまで筋肉に興味がなかったはずのジャネットが「筋肉マン大好き~」と思わず歌っちゃうのが可笑しい。
10.タッチ・ミー
純朴の仮面を捨てたジャネットがロッキーを誘惑しながら歌う、劇中でもっともエッチな歌。そんな二人の様子を盗み見しているコロンビアの被ってるミッキーマウスの帽子が可愛い。ルームメイトのようでとっても仲が良い二人の感じも素敵だ。
12.エディ
館に乱入してきたブラッドたちの恩師Drスコットが夕食会にて今は亡き(殺された)エディの生い立ちを歌うナンバー。この夕食会のマグカップの安っぽさが素晴らしい。
11.プラネット・シュマネット
ロッキーにベタつくジャネットに怒ったフルター博士が、彼女を追い掛け回しながら歌う歌。「あんたのアップルパイはそこまで美味しくないのよ!」「マスタードで頭を冷やしたら?」という言葉が面白い。歌い終わると、ジャネットやブラッドなど主要な人物を異次元転送装置でなぜか石膏像に変換する。
12.フロア・ショウ/世界をバラ色に染めて
フルター博士によってセクシーな衣装に身を包んだブラッド、ジャネット、コロンビア、ロッキーが舞台の上で歌い踊り、そこにあとからフルター博士が合流して、最終的にはみんなプールで乱交に及ぶシーン。フルター博士がミケランジェロの「アダムの創造」が描かれたプールを浮き輪で漂いながら歌う。「夢見てちゃダメ、夢になりなさい」という深いようで浅い歌詞に高校時代、励まされたとか励まされなかったとか…。
15.ゴーイング・ホーム
部下に裏切られたフルター博士が万感の思いを込めて歌うおセンチなナンバー。ここで涙する人がいたとしたら、それはトランシルヴェニア星人だろう。これを歌ったあと、博士は部下に光線銃で撃ち殺されます(ロッキーも)
16.スーパー・ヒーロー
宇宙に旅発つ洋館から取り残されたブラッドとジャネットが歌うやけに哲学的な内容の歌、この歌のあとサイエンス・フィクション/二本立てがしんみりと流れ始めエンドロールになる。
ああ、つかれた…。ちなみにわたくし、少し前に日本で公開された舞台版「ロッキーホラーショー」も観てます。フルター博士役は古田新太…、いや、名前は似てるけどさ…。
タイムワープは観客も交えて皆で踊るのだが、周りを見渡しても踊っている人はまばらだった。恥ずかしがり屋が多い日本で参加型のエンターテイメントはあまり根付かないかもしれない。
(ちなみ私は踊った、一人で観に行ったにも関わらず)