「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」
ヒーローのバーゲンセール状態のハリウッド。前作「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」でヒーロー映画にサスペンス的要素を盛り込む事に成功した、ルッソ兄弟が再びメガホンをとった本作は、「キャプテン・アメリカ」と銘打ってはいるがほぼ「アベンジャーズ3」、これまでのマーベルヒーローがところ狭しと登場するお祭り映画となっていてとにかく豪華だ。
英雄的活動の裏で多くの市民の命を犠牲にしてしまい、国際社会から非難を浴びるアベンジャーズ。
ヒーロー活動を国連の管轄内に定めるソコヴィア協定への署名を求められると、トニー・スターク(アイアンマン)を筆頭としたヒーローたちは参加を受け入れたが、スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)はそれを受け入れなかった。
そこから一大ヒーローチームが二つに分かれて争う事態になる…。
やたらたくさんのスーパーヒーローが登場する事で、映画が大味になるかと思いきやそうではなかった。
組織に属せず(社長ではあったが)あくまで一人で悪と立ち向かってきたアイアンマンと、アメリカ陸軍に所属して仲間と共に戦ってきたが、前作で組織に裏切られたロジャース。普段ワンマン気取りのスタークが国連加入を推し進め、普段は組織の長であるキャップがそれに反対する構図が面白い。
また、飛行場で巻き起こる大乱闘のスケールのでかさは単純に面白い。今回、初参加のおしゃべりティーンエージャー・スパイダーマンと大小自在無職ヒーロー・アントマンが重々しい戦闘に一種の明るさを差し込み、少し救われる。
シリーズごとにファンの楽しみとなっているアイアンマンのスーツ装着シーンもちゃんと盛り込まれていて嬉しい。
そして、一連の事件の黒幕が用意した最終兵器の意外性には純粋に驚かされてしまった。争いを生み出すのは人の心や、そこにある愛なのだと思うと、最後のある人物の行動の悲壮さに胸を突き刺される。
正直言って微妙だった前回の「アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン」に比べて本作は非常に緻密に作られているように思った。
「報復の是非」という911以降のアメリカの抱える命題をお祭り騒ぎのようなヒーロー映画で上手に描き切った、ルッソ兄弟。今後の「マーベル・シネマティック・ユニバース」の展開が楽しみだ。
ひとつ文句を言うとすればまたもやスタークの恋人、ペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロー)が登場しなかったこと。
「アイアンマン1~3」「アベンジャーズ」などはペッパーがいたからこそスタークの人間としての弱みを感じることができて、それがスタークへの共感に繋がっていたと思うのだが…。
ジャービスもいない、ハッピーもいない、そしてペッパーもいないとあってはあまりにスタークが孤独で可哀想だと思うのだが…。