「ウサギと行く春の京都旅⑤ 世界遺産の余裕と苦味とピョピョコちゃん」
スーパー銭湯の外に出て、時刻はまだ14時半、足はへこへこになっているし、風呂上りに快晴のぽかぽか陽気と来て非常に眠い。
眠いがここは渾身の力を振り絞って、昨日は入れなかった二条城に向かうことにした。
15時二条城に入場。平成の修復を終えた唐門は圧巻の迫力と美しさ。
数々の外国人がここで記念撮影をしていたが、それも頷ける。黒と金のコントラストが本当に美しい。さすが世界遺産、我が地元の宇都宮城と比べると月とレモン牛乳だ。
絵にも描けない美しさとはこのことか。
さっそく二の丸に入る、釘と板の作用でキュイキュイなる床、いわゆる鶯張りの廊下。
曲者の侵入を防ぐためあえてこういう音を出すように設計された…訳ではなく、自然にこのように鳴るようになったと説明が出ていて意外だった。
この音が妙に好きでウサギとわざと音を鳴らしてしばらく遊んだ。
大広間、一の間、二の間ではお侍や将軍の人形が置かれていて、大政奉還発表の様子を再現してある。
誰もいなくなった夜中もこの人形たちはここでじっとしているのかと思うと、少しぞっとする。
「トイストーリー」みたいに会話してたらどうしよう。
「今日は東南アジアの客が多かったな三太夫」
「はは、いかにも左様で」みたいな。
外に出て徐々に咲き始めた桜をほへーと眺めたりしながら、一通り城内を廻った我々は休憩所で一休みすることにした。
ところでこの休憩所、壁のガラスケースに虎徹、村正などの名刀が展示してあった。
休憩所にこんな名刀を!?さらっと展示しちゃうんですか!?
さすが世界遺産さまは私の地元の宇都宮城~以下同文。
さて、疲れた体を甘味で労ろうと、私は濃厚抹茶ソフトクリームを、ウサギはバニラソフトクリームを注文した。
店員さんに「濃厚抹茶は甘くないけど大丈夫?」と聞かれた、私だって酸いも甘いも噛み分けたれっきとした大人33歳独身、はっきりと「大丈夫です!」と応えて、アイスクリームを受け取った。
椅子に座って各々のアイスをぺろる、
苦い…
なんて苦いんだ…
この世界に蔓延する甘いものに対して抹茶が復讐を図るようなそんな苦さ…、そうだ、考えて見たら私はアイスコーヒーにガムシロとミルクは必ず入れる人間だし、寿司もサビ抜きのピョピョコちゃんだったではないか、ああ、苦い。
この突き刺さった、硬い八つ橋の甘さで…ああ、あまり甘くないやつだ!くそ!
ここぞとばかりにスキウサギが甘い香りを振りまきながらバニラソフトをぺろーるしてくる、むかつく。
絶対に「わけて」と言うもんかと額に脂汗流しながら必死で冷たくて苦い物体を始末した。
もう二年間くらい抹茶は食べたくない。
心身ともに疲弊した私は16時にホテルに帰ると、寝るまでの時間原稿を描いて過ごした。徐々に足に朝の登山による後遺症がでて、一時は錆びきったC-3POくらいのスピードでしか歩けないほどだった。
ウサギは私を置いて夜の京都を満喫したらしい。なんだあいつは。
そして、24日と25日はTOBICHI京都で公開原稿作業。
実は25日は早起きして、ホテルから霊山資料館まで歩き、龍馬を斬った小刀や、土方歳三の刀「大和守源秀國」、近藤勇の刀「州吉川六郎源祐芳」を拝見したのちにTOBICHIに向かいました。
近藤の刀は柄の部分が手の脂でぎっとりとしていて、いかにも使用した感じが出ている。
よほど気に入ったのかウサギガラスに顔を貼り付けてしばらくその場を動かなかった。
お前はトランペットが欲しい少年か。
この資料館には他にも新撰組の袖章や、龍馬の手紙、直に触って持ち上げられるゲベール銃と火縄銃があったり、近江屋のジオラマがあったりと、幕末好きの聖地といっても過言ではないだろう。
十分に満喫したあと、霊園にある龍馬と中岡のお墓をお参りした。
新撰組は好きだけど龍馬も好きだ。
東京に帰る日、新幹線に乗る前に京都ヨドバシカメラの6Fでカプリチョーザのトマトとニンニクのスパゲティを食べたのは、ここだけの話です…。
大好物だからさ…。
おしまい。
いよいよ京都個展は明日でおしまいです!