「ウサギと行く4泊5日広島旅行~5日目「帰宅人間、懐に忍ばせた高級あなご弁当」~」
旅行最終日。
朝7時に起きるとワシワシと部屋を片付ける。ウサギは持参したコロコロで自分の抜け毛を掃除している、こういうところはとてもマメな奴なのだ。
ホテルのささやかなテーブルの上にはこの数日間の私の行動教則となってくれた「遊びつくす!広島・宮島の旅!」的なガイド本がくたびれた様子で横たわっている。「どうじゃあ…広島は…え、ええじゃろ…」と言っているように見える。
短い間だったけど、ありがとうガイド本、もう開くことはないだろうけど。
ホテルをチェックアウトすると、来た時と同じように路面電車に揺られて広島駅へ。
10時13分発の新幹線に乗る前に、車内で開催する「遅めのちょっとゼイタクな朝食~SAYONARA広島~」用の弁当を物色する。
せっかくだから広島の名物っぽいものをと「穴子弁当」を購入。1300円。そんなお高級お弁当を小脇に抱えながら新幹線に乗り込み、広島をあとにする。
尻が落ち着くとさっそく「遅めのちょっとゼイタクな朝食~SAYONARA広島~」を開催し、弁当を食する。美味い。美味いけどこれが1300円かと思うと私の胸に酸っぱい感情が込み上げてくる。
私はどこかで穴子に鰻のような脂っぽさを求めていたのかもしれない。それは穴子に対してとっても迷惑なことなのに…。
眼前に広がる穴子弁当は一面穴子と飯であり、それは私にとってあまりに穴子穴子した穴子弁当だった。前を見ても振り返っても、そこにあるのは歴然とした穴子なのであって、鶏そぼろではないのだ。
そっと添えられた二枚の奈良漬がオアシスのように感じた。
そんなこともあり隣の席で「牛すきやき弁当」を美味そうに食べているウサギが憎らしく見えてくる。弁当を買う時にウサギが「僕は名物だろうが名物じゃなかろうが、そのときに自分の食べたいと思った弁当を買い、そして、食べるのだ」と言っていたのを思い出し、「ああ、その通りだなぁ…」と痛感した。
こうして旅行嫌いの私の4泊5日の広島旅行が幕を閉じた訳だが、たまには散財しての長期の旅行もいいものだと思った反面、「旅は3泊が限界だな…」とも感じた。結局4日目は殆ど作画作業をしていたのだから…。
これが原節子との二人旅だったならばまだ間がもったかもしれないが、しかし私が心を許せる友達はウサギしかいないのだから多くは求まい、穴子に鰻の脂っぽさ求めてはいけないように…。
そんなことを逡巡しながら私は帰宅用に購入しておいた「コンビニ人間」を紐解くのだった。
そして、こんなことを思うのだった「この本…さっき食べた穴子弁当と同じ値段か…」
おしまい