「ウサギと行く横浜・八景島日帰りの旅③~海底に揺蕩う異星の生物XとうさぎのビタミンD~」
ところで、私が水族館で地味に好きな生き物のひとつが世界最大の節足動物タカアシガニだ。薄暗い水槽にのっぺりと佇む巨大な蟹の群は、蟹というより異星に生息する未知の生物のようで、ものすごく怖い。
小さい子供が水槽のそばに立つと思わず「危ない!逃げるんだ!」と叫んでしまいそうになるような、緊張感。
どこか遠くの冷たくて静かで、光の届かない真っ暗な海の底に、こんな大きな生物が群をなして蠢いている様を想像すると、ぞわぞわとした感覚に襲われる。
タツノオトシゴの仲間クロウミウマは一見して海中に漂う錆びた鉄屑みたいに見えるのに、ちゃんと動くのが不思議だった。「生き物って不思議だなぁ」なんて思いながら、なんとなく振り返るとさっきのタカアシガニが立ち塞がっていて思わず悲鳴を上げそうになる。
上の階に上がってさっきのホッキョクグマのコーナーを覗くと岩場の影で眠るホッキョクグマを見ることができた。丁度下の階の人の死角にすっぽり収まっていたのだ。
その隣、カクレクマノミの水槽は「ファインディング・ニモ」の影響かやはり子供達に大人気だ。
一人の子供が「ママ、一匹死んでるよ」と母親に指差す、その先には確かに息絶えて力なく沈むカクレクマノミの姿があった。そう、ニモだってドリーだっていつか死ぬのだ、こんな風に。
そんな厳然たる自然の摂理を容赦なく子供に突きつける、シーパラダイスのもう一つの一面を見れて感激した。
アクアミュージアムをあとにした我々は続いてドルフィンファンタジーに赴く。「イルカたちが届ける夢と癒しの世界」だそうだ。
水槽の中を歩いているような気分になれる展示室は、そこに降り注ぐ陽光も相まって、まさに癒しの世界。イルカも良かったが、この海底にいるような気分になれるアトモスフィア自体が良かった。ウサギとしばらくぼーっとする、我々はさながら海底で揺れる昆布か何かだ。
「ああ、太陽を浴びてビタミンDが出来ちゃう」とウサギがブツブツ言っている、ウサギも太陽浴びるとビタミンDができるのだろうか。