「ウサギと行く横浜・八景島日帰りの旅⑨~聖地巡礼はウサギの慟哭に消ゆ~」
火照った体を浜風に冷ましながら我々は最後の目的地、日の出町に向かった。
「あまちゃん」も「半沢直樹」も、一秒たりとも見たことがない私とウサギが唯一見るテレビドラマが「孤独のグルメ」。
中年の男がただただ美味そうに飯を食べるだけのドラマだが、今ではBlu-rayボックスを全巻揃えているほどハマっている。
そのシーズン3に登場する台湾料理屋「第一亭」、そこの「パタン」という料理をどうしても一度食べてみたいのだ。
見た限り中華麺をごま油とともに大量の生にんにくで炒めただけの料理のようにみえるが、その限りなくシンプルな外観と、「明後日までニンニクが残っちゃうよ」という登場人物のセリフとが相まって、ずっと気になっていた。
もう、日も落ちてあたりは暗くなっていた。日ノ出町駅を降りるとまっすぐに「第一亭」を目指す、地図は頭に入れてあるし、この日が営業日であることもきちんと確認してある。
そう、万葉倶楽部で何も食べなかったのはここでの食事をより美味しくしようという目論見があってのことだったのだ。
ホルモンも食べよう、餃子も食べよう…、
期待値は今臨界点を突破しつつある…。
自然と早歩きになる私達。
駅からすぐのところに憧れの第一亭はあった…、
そして、こんな張り紙が貼ってあった
「本日休業いたします」
膝から崩れ落ちて慟哭するウサギの背中を、私は黙って見ていることしか出来なかった。どこからか映画「八甲田山」のテーマ曲が聞こえてきたような気がした。
また、横浜に来ることがあったらそのときこそ「パタン」を食べよう。そう心に決めて我々は帰路に着いた。
最後の最後で奈落に突き落とされる、そんな日帰りの旅であった…。