「ウサギと行く横浜・八景島日帰りの旅⑤~ぬっとりアシカとシロクマの忘れ物の真偽~」
素敵な海育体験を済ませた我々は残す最後のコーナー「ふれあいラグーン」へと向かう。文字通りここでは様々な海の仲間達に触ることができるのだ。
可愛い動物は取り敢えず触っておきたい私にとってはなかなか魅力あふれるコーナー。わきわきと私の右手も期待に震えている。
入場すると丁度アシカのレオ君に触れるコーナーが終わる寸前だった。我々は急いで手を洗うと子供達の中に加わって、そっとレオ君の背中を触れてみる。
「ぬっとり」している。
微妙に温かいものがぬっとりとしている。
手に残ったアシカの感触にじーんと感じ入る、幸せである。
その後、水槽に横たわるツチザメの背中を触ってみたり、日向ぼっこするアザラシを遠目から眺めてみたりしていた。しかし、イルカなどに触るためには受付で予約などが必要なようだったので諦めた、私はそういう手続きが好きではないのだ。
「やってる?」的な感じで暖簾をくぐって、ペロッと動物が触れたらいいのにとつくづく思う(ちゃんと手を洗って)。
すべての水族館を堪能した我々はなんとなく行き場を失ってふらふらしていた、時刻は13時30分、さっきギンザケの唐揚げを食べたのであまりお腹は減っていない。
ふと、「氷の国 アイスファンタジア」なる小屋が目に入る。
きっとまつ毛が凍ったり、バナナで釘が打てたり、映画「八甲田山」並みの寒さが味わえる施設に違いないと勘ぐる我々、さっそく400円払って入ってみることにした。
閑散とした平日である、お客はどうやら我々だけのようだった。
スタッフさんによると「この中のどこかにシロクマさんの忘れ物がありますのです、お一人様ひとつお持ち帰りください、その忘れ物の重さが本物の忘れ物と同じ重さなら景品が出ます」とのこと。
手渡された本物の忘れ物の重さを必死で覚える。
「本物の忘れ物ってどういうことなんだ?」という疑問は胸に留めて、さっそうと「氷の世界」に入場した。
…氷があった。
氷のブロックがなんとなく積まれている。
楽しげな半立体のシロクマが笑っていた。
寒さは…昔、研修で働いたスーパーの冷凍食品倉庫を思い出した。
つまり、そのくらいの寒さだった。さっきまで高かった我々のテンションが文字通り低下していくのを感じた。それでもウサギなぞは「このなかのどこかにシロクマ忘れ物があるはず!」と鼻をスンスンさせて平静を保っている。しかし、ためつすがめつ見渡してみてもあの茶色い巾着袋は転がっていなかった。
10歩ほど歩いたらそこはもう出口だった。
そして、折りたたみテーブルの上に大量のシロクマの忘れ物が放置されていた。
私はその中から記憶の重さと照らし合せながら一つの巾着袋を選び出した。
出口兼入り口のさっきのスタッフさんに袋を渡すと正解の忘れ物と私の持って来た忘れ物を天秤にかけた、我々の持って来た忘れ物は本物の忘れ物より一寸軽かったようだ。「ざんね~ん」と店員のお兄さんに言い放たれた。