イッセー尾形の大家族
イッセー尾形の一人芝居を見たことのある人がこのブログの読者の中に何人いるだろうか。
きっと映画に登場するイッセー尾形は見たことがあっても、イッセー尾形の一人芝居を見たことのある人は少ないのではないだろうか。
何を隠そう私はイッセー尾形の一人芝居の大ファン。
私の家のDVDラックにはほとんどすべてのイッセー尾形DVDが鎮座しているし、どのDVDも穴があくまで何度も見ている。
もしかすると私の大好きな落語の世界へ誘ってくれたのはイッセー尾形の一人芝居だったのかもしれない。どちらも一人の人間が、それまで観察してきた人間たちの情景を演技によって表現し、ひとつの映像を観客の脳内補完によって作り上げる点においては似ていると言えるのではないか。
イッセー尾形の一人芝居の面白さの要因のひとつは彼の演じる人物の抱えるある種のペーソスだと思う。
女子大学生と恋愛している初老の大学教授がカーショップを訪れ、クラウンマジェスタを買おうとするが予算が全く足りなかったり、家族旅行で温泉旅館に来た中間管理職の男の楽しい夕食の団欒は会社からのトラブルの電話で台無しになる…。
運命に翻弄される人物をイッセー尾形が必死に演じれば演じるほど、不思議に可笑しみが湧いてくる。重要なのはイッセー尾形に客を笑わせようという意識がないということかもしれない。敬愛する落語家・柳家小三治師匠も「笑わせようとするな」と口を酸っぱくして言っていた。
イッセー尾形の作品のなかでいちばん好きなシリーズものは「大家族シリーズ」。妻と不仲で何かとたくさんの子供たちの面倒を押し付けられる男。イッセーがしゃべっているだけなのにだんだんとそのまわりに存在する子供たちの姿までくっきりと浮かんでくるもの凄い舞台です。
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