「ウサギと行く4泊5日広島旅行~1日目「牛めしウサギと広島走りの汁なし男」前編~」
広島。
真っ先に頭に浮かぶのはやはり「原爆」。
小学生の頃、何度も繰り返し読んだ「広島のピカ」という絵本は今でも印象深い、それから、昭和史(主に大東亜戦争前後)にまつわる本ばかり読む私にとっては、日本一の海軍工廠の街として栄えた呉市があることも魅力的で、有名な「大和ミュージアム」は一度は訪れてみたいと常々思っていた。
あとはもみじ饅頭、お好み焼きに牡蠣…。それに2年に一度開催される短編アニメの映画祭、広島国際アニメーションフェスティバルなんかもある(大学生の頃はとても憧れた)。
正直、餃子くらいしか名物がない、宇都宮出身の私からすれば名物がたくさんあって羨ましい限りの県、それが広島。
…と、それくらいしか思いつかないが、とにかく4泊5日、広島に行くことは決まっているわけで旅慣れていない私はさっそく書店のトラベルコーナーで「遊びつくす!広島・宮島の旅!」的なガイド本を購入した。
そういえば、広島といえば有名な厳島神社があったことを本を読んで思い出す。確かかのサザエさんもオープニングで参拝していたように記憶しているし、なんとなく平清盛が関わっていることも知っている。
せっかく少なくない交通費を払って遠方に赴くのだからできる限りの場所を巡りたいと膝が武者震いする。
しかし、そのような長旅を一人で行くのも寂しいもの、ここは誰かを誘おうと友人のウサギを誘う。気兼ねしないで済む唯一の友人だし、何せいつも山をうろうろしてるだけの暇なウサギなので誘いやすいし、動物だから運賃もタダだ。
そして、旅行当日、打ち合わせや編集をぶち込んでこようとするプロデューサーやら制作を半ば無理矢理かいくぐり、東京駅から12時10分発の新幹線にウサギと一緒に乗り込んだ。
慣れない旅行とあって当日はよく眠れず5時に起きてしまった。
早めの朝食だったせいか空腹は限界を超えて、いまならケバブの肉を串のまま食べれそうな気がする。
目に涙を浮かべて制止するケバブ屋のバイト店員ハッサンに心の底で謝りながら肉にかじり付く図を想像しながら、ふと横のウサギを見るとなんともう弁当を食べているではないか。
しかも、草食動物のくせに「黒毛和牛使用 牛めし」を美味そうにムシャムシャ食っている。だいたいまだ新幹線は品川にすら着いていない、駅弁はなんとなく新横浜を出てからゆったり食べるものではないのか。
ウサギという概念の崩壊を感じながら私はそっと文庫本(「中国行きのスローボート」)を開き、空腹をごまかした。
つづく
↓面白かった。