アーロと少年
ピクサー製作、ピーター・ソーン監督作品。巨大隕石が地球に衝突せず、恐竜が生存を許されたパラレルワールドを舞台にしたファンタジーアニメーション。弱虫な恐竜アーロとワイルドな人間の男の子の種族を超えた絆を描くロードムービー。
実写を超越している自然描写、職人技術によって到達しているアニメーション技術、キャラクター造形などはさすがピクサー、王道に徹したプロットもシンプルで良し、涙も誘う。
しかし、諸手を挙げて「最高傑作!」と言えるかというとそうではなかった…。
ひとつひっかかる事があった。
恐竜が喋るのは良いし、恐竜が農耕しても良い、しかし、道中に出会うティラノサウルスたちが捕食対象であるアーロを目にもかけないのが疑問だった。一言「草食竜は不味いから食わない」って言ってくれたら済むことなんだけど。
種族の壁、相容れない食物連鎖の鎖を否定したことによって、クライマックスのアーロと少年のやりとりもどこか気の抜けたものにしてしまったのではないか…。
人間と恐竜という相容れない種族の隔たりが、クライマックスのアーロの決断の鍵となるのに、物語の世界観が種族の隔たりを曖昧に描いているために、そこに嘘っぽさが入り混じってしまっているのだ。
あからさまな悪役のように描写される翼竜たちも、自然の摂理に則って捕食しようとしているのであって決して「悪」ではない。
もし、この映画の世界で恐竜たちが草食肉食の隔てなく、物々交換で生計を立てている描写でもあれば別だったが…。でも、それじゃあ今度公開される「ズートピア」と被るか…。
同じピクサー作品である「ファインディング・ニモ」でも主人公の魚が捕食者であるサメに出会う場面があるが、サメは魚を食べようとしない。なぜならそのサメは「魚は友達、エサじゃない」を合言葉に海藻食主義を貫こうと努力しているからなのだが、血の匂いを嗅いで正気を失い結局、主人公を食べてようと襲い掛かる。
恐竜と魚でシチュエーションは違えど、捕食者と被食者の関係性を無視しなかった「ファインディング・ニモ」はやはり隙がない。
でも、まあ恐竜好きの子供には何の憂いもなく楽しめる映画となっているだろう。ただし、中盤のディズニー伝統のトリップシーンはほんとうに気持ちが悪く、もしかしたらあのシーンを思い出して悪夢をみる子供もいるかもしれない…。
あと同時上映の短編「ぼくのスーパーチーム」。あれはいったい何が言いたかったのだろう…。「偶像崇拝は最高だぜ!」ってことだろうか…。うーん。
↓傑作
ファインディング・ニモ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2016/04/20
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログを見る
↓ロードムービーで一番好きな映画はこちら。