残穢〜住んではいけない部屋〜
小野不由美によるホラー小説の映画化作品、怖い話の蒐集をしている小説家の私(竹内結子)に一人暮らしをする女性・久保さん(橋本愛)から一通の手紙が届く。久保さんが住むマンションの和室から畳を掃くような音がするというのだ…。
以前にも言った通り私は怖い話が大好き。したがって怖い映画も好き。
「リング」や「呪怨」などがジャパニーズホラーともてはやされた頃と違い、近年は和製ホラーが下火になった印象がある。そんななかこの作品は久しぶりに正統な和製ホラーたり得たように思う。
特に前半の怪異が起きるマンションの土地の歴史を次々に遡っていくくだりは、ミステリー的な面白さがあり、単純に化け物を出して怖がらせるだけのホラー映画の類とは一線を画する。事故物件でないのに怪異が起きる不条理さも、如何にも実話怪談らしくて良し。
とくに赤ん坊の泣き声の幻聴に悩まされ、ノイローゼになる高野トシヱ夫人の顔が怖い。眉間のしわのより具合、眼力、ホラー映画を体現するような素晴らしい表情だった。ナイスしわ!
しかし、少し残念なのは劇中に登場する黒い影のような男たちの見せ方。とくにクライマックスのそれはすこし見せすぎのように思えた。もう少し観るものの想像力に委ねるような恐怖表現もできたのではないだろうか。黒い影が動く様をCGで表現したのも頂けない、強い恨みを持った怨念が軽く見えてしまった、同じ黒い人の霊であれば「怪談新耳袋」の「ふたりぼっち」の質量を持った霊のほうがぞっとする。
しかし、怪異の原因を追究していきそれを突き止める構成は「リング」のそれと似ていないとも言えず。改めて「リング」の完成度に気付かされる、金切音を効果的に使った恐怖演出、低画質のビデオ映像の想像力を掻き立てる恐ろしさなど、今見ても衰えない怖さがそこにある。「貞子3D」はそんな傑作にミソをつける最低作品だが…。