ベニスに死す
ルキノ・ヴィスコンティ監督の傑作「ベニスに死す」。
ベニスで休暇を過ごす老作曲家がふと出会った少年タジオに究極の美を見出し、ペストの黒い影が忍び寄るベニスの街を火に誘われる蛾のように徘徊する…。
マーラーの叙情的な音楽が印象的なこの映画で、私が一番好きなシーンが、ホテルのテラスで流しの楽隊が歌う曲。
字幕が入らないのでどんな内容の歌詞なのかはわからないが、ボーカルの卑猥な腰つきからするとイヤラシイ内容の歌のようだ。
「横丁のパン屋の親父さん、若いカミさんもらってえびす顔、どっこいカミさん浮気者、今日はあっちへ明日はこっちへ、それも知らずにパン屋の親父、今日もニコニコ誇らしげ、こいつぁ可笑しいアハハハハ、笑いが止まらぬウフフフフ」
みたいな歌詞だろうか…。
「ワハハハ、ワハハハ、ワハハハのハ」と後半はほとんど笑い声だけで歌うのだ。
この流しが白塗りの上に目に隈があり、まるで死神がこれから死ぬ人間どもをあざ笑っているようで、なんとも不気味なシーンです。
ところで笑い声で構成された曲って結構多いですね。
これは昭和初期に活躍した二村定一の「笑い薬」。