七宝焼き
思春期のハイライト、中学時代。
まだ短編アニメーションともイラストとも出会っていなかった、私の楽しみといえばジャンプを読むことと、ひとりで映画館に行くこと、そして、七宝焼きを作ることでした。
当時美術部に所属していた私は、放課後になると美術室に入り浸り、デッサンするでも彫刻する訳でもなく、ひたすら七宝焼きを焼いていたのです。
ペースト状のガラスの粉(釉薬)を銅板に盛り、800℃の電気オーブンで焼く工芸品。ちょっとでも釉薬を盛りすぎると、全部銅板から流れ落ちてしまうのです。
800℃の高温でガラスを溶かす作業にロマンを感じ、中学生の私は夢中になってしまいました。今も昔も、熱中するとひたすらに作り続ける性質の私は釉薬や銅板、ガラスのビーズを求めて田舎の画材店を自転車でハシゴしたものです。
それでもなかなか銅板が手に入らず、少しでも気に入らない七宝焼きはすぐにハンマーで叩き割り、型を整えて再び使用していました。
気分は「ちがう!」と叫びながら焼きあがった壺を叩き割る、気難しい陶芸家のそれでした。また、いつか再挑戦してみたいものです。老後かな?